【小説】専属ミュージシャン
汚れている。
新品のギター、おろしたての衣装、サラサラのカツラ。
すべて、過去になった。
すべてが、もれなく汚れている。
シャワーを浴びている間に、部屋の一切のものが黒く汚されている!
専属ミュージシャンのこの俺は、これからライブだっていうのに。
誰がこんなことを?いや、そんなことより、どうすればいい?
「風呂から上がりたての、蒸気を発する専属ミュージシャンは素っ裸のまま立ち尽くしていた」
なんつってな。ははは…
ともかく、腹が減った。
完全予約制、出前型イタリアン「ヴァカダステン」の、イカスミパスタを頼んでいたんだ。
風呂に入っている間に、来たみたいだ。中央のテーブルに置いてある。
とりあえず食うか。パカッ
…なんだこれ、イカスミパスタなのにイカスミが全然ないじゃないか。
ま、いいか。