【小説】悩む者 歯磨き編
口が臭い。歯を磨かないといけない。でもどうしよう。夜でもいいか。寝る前に磨けば良い。
いや、夜は疲れているから磨けないかも知れない。寝てしまうかも。
それでは食後に磨けば良いのではないか。しかし最近の学説では、食後に歯を磨くことはあまり良くないらしい。酸がどうのこうのと言っていた。食後はやめておこう。
仕事に帰ってきた直後か?いやそれは疲れているから無理だ。まずはくつろぎたい。
しかし、家族が洗面を使い始めるかもしれないから難しいところだ。
では朝起きてすぐか?
いや、それも無理だ。出社直前まで寝てしまうから、とてもじゃないが歯を磨く余裕などない。
通勤しながら磨くか?
ばかな。そんな非常識な真似が出来るわけがない。自家用車ならまだしも、電車のなかで歯を磨くなど正気の沙汰ではない。だいたい、「クチュクチュ…ペッ!」はどうするんだ。飲み込むしかないじゃないか。
しかし、昨今は平気で化粧する女もいるから、そろそろ歯を磨く奴が出てきても良いんじゃないか。いずれにせよ、それは俺ではない。
では、休憩時間中に磨くか?食べる前だ。それなら良いかもしれない。いや、だめだ。恥ずかしい。「あいつ、食前に歯を磨いてるぞ!」「意味ねえwwwwwww」とか言われて奇異の目で見られたらどうする?耐えられない。
…もう寝よう。
嗚呼、今日も歯を磨けなかった…。